加藤喜一  -MORE THAN THIS- 
     Keach Kato's Daily Column
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3/3(日) 4月までのライヴスケジュールを更新しました。

 

 

 4月までのライヴスケジュールを更新しました。

https://keachkato.com/live.html

 

 3月に入ったので確定申告の準備をしないといけない。通常の弥生での会計事務作業も2月はほとんどやっていないので、これもやらなくてはいけない。事務モードにアタマを切り替えて、さっそく明日からやろうと思っている。インスタライブも無事終えて少し一段落できている。

 

 本日は弥生賞。今年のダービー馬との前評判の高いトロヴァトーレに鞍上ルメールと来れば、これを軸に流すだけ。穴狙いでニシノフィアンスも入れて、元ジョッキーで解説者でもある細江純子さんの予想ともバッチリ重なったことで安心してレースを観ていた。少なくともガミるこはないだろうと安泰の気分でいたのだが、4角を周ったところでも上位人気馬2頭は馬群から動けず、外からすーっと6番人気M.デムーロのコスモキュランダが上がって来て差し切ってしまった。川田のシンエンペラーだけが人気と順位を維持しただけだ。しばし呆然。予想に絶対はない。思い通りに事が運ばないことの方が世の中多いという大前提を、またもや痛烈に味わう結果となってしまった。良い勉強になった。

 

 1日金曜の深夜に再放送していた「歌えるJ-POP黄金のヒットパレード#10」を録画したので、これからちょっと観てみようと思う。この次の#11に、先日収録したSALLYは出演する。どんな番組か、番組の流れも把握しておきたい。

 

BGM fav147 途中

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BGM fav148開始

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3/2(土) various 3/2

 

 

 1990年のブエノスアイレスでのクラプトンのライヴがYouTubeに上がっているので観てみる。24nightsの頃である。https://youtu.be/oCPiQ8HKShM?si=tTmWSv8ukzJYx5Ha

 

 45歳のクラプトン。歌声は今と多少違う。今と比べると線が細い印象を受ける。円熟した味わいはまだないが、ヴォーカリストとしての完成度はすでに高い。ギターに関してもこれ以降の方がより熟達しているように思う。それでもこの頃でも相当のものだが。

 

 加齢による声の衰えは誰もがあるはずだが、クラプトンの場合衰えは感じられない。むしろ今の方が太く、表現力が豊かになったようにさえ感じる。ギターのアレンジを変えるように歌も巧みに崩し、声量を調整し、バンドのアンサンブルとうまくバランスを取っている。またさらに枯れた味わいも時に見せている。老齢に近づくほど、若い時よりも良くなっているというのは歌い手にしては珍しいことだと思う。どんなメンテナンスをしているのか、あるいは何をして、何をしていないのか知りたいところだ。

 昔のインタヴューで、若いときにレコーディングした自分の歌声がまるで子供のように細くて嫌いだと云っていたのを思い出した。憧れていたアメリカのブルーズマンたちのような大人の声に早くなりたいと思っていたとも云っていた。そしてその声になるまではギターで表現したいとギターに専念し、やがてCreamを経てソロでの経歴を重ねていく。ワインが熟成するのをじっと待つかのようにクラプトンは加齢を待っていたのかもしれない。

 

 カーメン・マクレエのようなクリスタルで美しい歌声だった歌手が、年を重ねて「ん?」となってしまうような声に変わってしまうことは珍しいことではない。もちろん歌は上手いので若いときとは違った味わいはあるが。

 

 声は個人差も多分に影響するだろう。しかし、いくらどんなに大事にケアしていても老いだけは避けられない。オレもやがては真剣にそのことに直面することになるだろう。できればクラプトンのようになりたいものだが。

 

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3/1(金) Thanks♪

 

 

 

 

 

 2月の終わりは荻窪Doctor’s bar、おうちからインスタライブ#39で締めくくり。

 いらしてくれた方々、ご視聴された方々Thanks♪インスタライブへの投げ銭ありがとうございました。

 

 花粉症の症状は鼻うがいで最低限に留めたつもりだが、多少は歌に影響があったかもしれない。鼻腔の奥の鼻づまりは鼻うがいが有効のようで、かなり効果あるのだが、時間が経つとまた詰まってしまうのはどうにもしようがない。強い風は止んだが今日もまた花粉は飛び交っていたようで、特に朝はくしゃみ、鼻水症状が頻発した。

 

 3月は16日にclub DoctorSALLY箱崎昇とバンドスタイルでライヴがある。1度リハをやっておきたいので出演メンバーである山崎真也、川口伸王、村山政太らにスケジュールの確認を。彼らも忙しい身のため、なかなかスケジュールが合わないがなんとかやりくりした。尚、その日は先日収録したNHK BS 歌える!J-POP黄金のヒットパレード決定版!#11」のOA日でもある。38年ぶりにSALLYとしてメンバー5人で出演している。リアルタイムで視聴できないのは残念だが致し方ない。もちろん録画予約するので問題はないが。

 Doctorでは石川さん、ホッキーに税についての相談を。快く乗ってくれて助かった。先月はキーボード機材についても相談に乗ってもらった。ありがたい限りである。

 

 おうちからインスタライブは39回目。NHKBS番組収録の際のSALLYメンバーとのことが当然ながらメインテーマ。例によってアーカイブを上げています。小声で生歌披露はparismatchの「KISS」を。初期の佳作だと思う。この曲のコード進行が好きだ。「東京バックサイド・ブルース」にも通じるものがある。Doctor’s barでのサウンドチェックの際、インスタライブでの声の出し具合を確認するために少しリハーサルしておいた。

 

 

 

 

 

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2/27(火) 明日はDoctor’s 明後日はおうちからインスタライブと続きます♪

 

 その強さは台風並みという風が強い一日。気温も低いので体感の寒さは当然気温以下である。その風のせいか、花粉症の症状は夕方まで続いた。くしゃみ、鼻水がなかなか止まらず。

 昼間ほどではないが、夜になっても風は強く、さすがにベランダで一服するのも至難の業。寒過ぎる。窓をほんの少し開けて、キセルの先っぽだけ外に出して吸うという、なんともみっともない姿で喫煙。

 

 さて、明日28()は荻窪Doctor’s barでマンスリーソロライヴ。明後日29()はおうちからインスタライブ#39です。例によって例の如くでお送りします。良ければ投げ銭よろしくお願いします。

https://keachkato.com/live.html

 

 さて、少しDVD鑑賞を。

 

 

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 2月28日 ()   加藤喜一マンスリーライヴ at Doctor's Bar  

荻窪・Doctor's bar

加藤喜一 (vo,ag,harp)



■ open 19:00 ■ start 19:30 2stage 
■前売 2,800+1D(500)当日3,300+1D(500)
〈Happy Hour〉
オープン〜スタートまで、¥1000で3ドリンクチケット販売

■予約・お問い合わせ https://doctors-bar.com/index.php?mail
Tel:03-5335-7057
東京都杉並区上荻1-16-10ローレルビル4F




 
    2月29日 (木)    おうちからインスタライブ #39
 
 
おうちからインスタライブ
22:30スタートです♪
トーク、音源プレイ、プラス生演奏でお届けします。

インスタグラムで加藤喜一もしくはkeachkatoを検索してフォローしてください。
ライブ開始のお知らせが届きます。
https://www.instagram.com/keachkato/


Paypayもしくはクレジットカード決済による投げ銭、寄付お受付しています。
Paypayは、ID=keach 宛に「送る」です。
パスコード入力がありますが無視して結構です。
クレジットカード決済はKeach's on line shop MORE THAN THISの「全てのメニュー」から「おうちからインスタライブ投げ銭」をタップし、デフォルトの金額、もしくは自由に設定した金額を入力してください。


 

 

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2/26(月) various 2/26

 

 

 夕方から花粉症のくしゃみ、鼻水が出始め、夜になって本格的に症状が増して来た。くしゃみ連発、鼻水タラタラ。薬は毎日欠かさず服用しているが、それでも酷いときはシーズン中に何度かある。1週間前はこれほどではなかった。NHKの収録はどうにかなる程度で済んで良かった。まあ、緊張感がある状態では脳から何やら分泌しているはずで、おそらくその何やらがアレルギーも抑え込んでしまうのだと、自分の場合に関してはそう思っているのだが。

 

 先週、遅ればせながらインボイス登録の手続きをe-taxで税務署に申請した。登録申請から番号通知まではおよそ3週間かかるとネットには出ている。今までは様子見していたのだが、消費税の納税と云っても、オレの場合そんなに負担になるわけでもなさそうだし、弥生の会計ソフトもそれに対応しているので、事務作業がひどく難しくなるということもないだろう。また税に関しては、今後はさらにそういう形で増税されていくだろうし。ともあれ番号通知待ちである。

 

 そして、確定申告の作業を、そろそろ始めないといけない。

 ただ、今月のおうちからインスタライブが終わってからにしようと思っている。今月は2/29()にやります。お楽しみに♪

 

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2/25(日) CHAD、RAM Thanks♪

 

 

 

 

 

 

 今週はNHK BS歌える!J-POP黄金のヒットパレード決定版!#11」の公開収録の翌日が池尻大橋CHAD、そして昨日が鎌倉Bar RAMでソロライヴだった。いらしてくれた方々Thanks


 さすがに心身ともにグッタリ。

 CHADでのライヴでのMCは当然ながらテレビ収録のときのことを。観覧した方々もいらしてくれて、賑やかなライヴとなった。ライヴ後半はみなさんスタンディングで踊っていた。スタンディングはRAMも同じだが、RAMの場合はもともと立ち飲みスタイルの店。踊ったり一緒に歌ったりはいつものことである。

 この2本のライヴで、ブルースハープが2本潰れた。が、交換用のリードプレートは京阪ライヴのときに用意したものがある。そのときどきにもよるが、だいたい1か月半くらいでよく使うキーのハープはダメになってしまうようだ。

 

 RAMKenちゃんはテレビ出演を喜んでくれていて、OAを録画すると云っていた。そんなRAMの周年ライヴが4/28()に鎌倉のUni Vibeという店であるという。「喜一さんも出てよ。タツミさんも来るし」と云うので、出演することになった。

 それにしても収録の日は季節外れの暖かさだったが、翌日から一気に真冬の寒さとなり、天気は下り坂。昨日だけが晴れていた。鎌倉でのライヴが昨日で良かったとつくづく思う。若宮通りの鳥居の向こうには満月が見えていたので、舗道の早咲きの桜を入れて撮ってみた。

 

 さて、今日未明に行われたサウジアラビアでの1等賞金15億円というサウジカップ。残念ながら3連複、馬連、単複すべて外してしまった。アメリカ馬の1番人気ホワイトアバリオは内枠だったせいもあって伸びなかったこともある。

 JRAの方は東西二重賞。阪神での阪急杯は馬連、単勝ともに的中。中山の中山記念は期待していた西村のエルトンバローズが伸びず、馬券は残念な結果となった。

 

 クラプトンが先ごろ行なったイスラエル・ガザの難民救済チャリティコンサートの動画がYouTubeに上がっているのでこれから視聴するところだ。去年武道館で観たときにも思ったが、ギターはもちろんのこと、歌に衰えがまったくない。とりわけ歌に関して、巧みに緩急をつけているのは感じられるが、それは円熟した歌い手としての味になっている。オレは20年後、今のクラプトンと同じ年になるが、果たしてそういうことができているだろうか。どうやってプレイのクオリティを維持しているのかというところを、動画を観ながら探りたいところだ。

 

 

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2/23(金) NHK歌える!J-POP黄金のヒットパレード決定版!#11」本番収録 その2

 

 

 

 明日24()は鎌倉Bar RAMで生音ソロライヴです♪

 19:30スタート。

https://keachkato.com/live.html

 

 

 さて、38年ぶりに入ったNHKの食堂。社食、学食を思わせる広い食堂はその頃と変わっていなかった。食券を買って、メニュー別に異なる受付に並んで供されるのを待つ。オレと洋介は寿司の受付に、ハコは定食に、尚とマコトと娘さんは麺類に並んだ。寿司の受付はなぜか人気がなく、オレたち2人だけだった。洋介が注文した握りは注文を受けてから握るというちゃんとしたものだった。オレは焼き鯖ちらし。本番前なのでガッツリしたものは食べない。量的にもちょうど良かった。テーブルへ移動し、さっそく食べ始める。やがてハコが豚しゃぶ定食のトレイを持って隣に座った。ふと麺類の受付を見ると、そこだけ長蛇の列。やはり麺類は人気があるようだ。列の前の方に尚たちの姿は見えなかった。

 寿司組が食べ終わった頃、ようやく彼ら3人がラーメンのどんぶりが乗ったトレイを持って着席。やがてハコの食事も終了し、彼ら3人が食べ終わるのを待ちながら雑談。paris matchが来月中国ツアーを行なうのだが、そのビジネスビザの取得に苦労しているという話を聞く。文化も常識も異なる国なので、行ったら行ったでまた何かありそうだと苦笑混じりで心配していた。

 全員の食事が終わったところで楽屋に戻る。戻る途中、目の前の廊下を大勢の人が向こうに歩いて行くのが見えた。オレたちから見て、右から出て来たその列は右に曲がってオレたちが向かう方向へと歩いていた。

 

「あ、客入れ始まったんだな」

 

 ちょうど19:00前だった。一緒になると気づかれるかもしれないので、入場の列が終わるのをやり過ごすことにした。右から出て来て右へ曲がって行くその列の一人として左を振り向く人がいなかったのが不思議でちょっと面白かった。5mも離れていないところにオレたちは隠れもせず佇んでいたのだが。

 

 楽屋に戻り、また休憩。オレは鼻うがいと歯磨きをし、喉の調子を確認するために、ムスタングを抱えてスタジオの隅に行き、少し歌う。鼻の通りは良くなって鼻声は気にならなくなっていた。午前はダメでも夜にはたいてい復活するものだ。

 それぞれ衣装に着替え始める。OA前ということもあり、それぞれの衣装についての詳細は差し控えたい。3/16OAをお楽しみに。

 とりとめのない雑談にも飽き始め、ただ出番が来るのを待つだけの、食後の少しけだるい時間がゆっくりと過ぎていく。

 

「酒飲んでるときの3時間4時間なんてあっという間なのにな」

 

 ハコがそう云うと、その通りだと誰もが頷いた。みな口数が少なくなり始めたが、それでもマコトがいろいろとみんなに話しかけていたので、沈黙が続くということはなかった。

 

 時間的に収録本番は始まっていたが、スタジオにはそのときの出演者以外入れないので様子を窺い知ることはできなかった。モニターはスタジオ外のスタッフが集まっているところにしかない。ひたすら出番を待つ。

 歌の前にMC収録があり、それはヴォーカルとしてオレ一人が呼ばれていた。やがてADがオレを呼びやって来た。残っていたメンバーに「行ってきます」と云い置いて、ADとともにスタジオへ。隣にある控室で待機する。ここはスタッフたちがいるモニターの音が聞こえて来る。常に周囲がざわついていて、オレは一気に本番のテンションにスイッチが入っていくのを感じながら、スタッフが観ているモニターに近づいて行った。長尾Pが厳しい表情でモニターを見つめていた。

 別のADに案内され、いよいよスタジオへ。MC席の裏手で待機。用意されていたペットボトルの水を口に含む。MCマイクを持ってMC席へADに誘(いざわな)われ、フロアディレクターと簡単な打ち合わせ。目の前には満席のお客さん。だが、まだここが暗いためか、お客さんが気付いた様子はなかった。

 本番のMC収録が始まった。

 

 これまたOA前なので、詳細を記すことはできない。3/16OAの後、そのとき思ったことなど書きたいと思います。

 

 撮り直しもなく無事終了。ADとともに再び楽屋へ戻る。戻る途中でADにどれくらい押しているのか訊ねる。

 

「えーと、5分押しですね」

 

 ということは歌まで10分はある。一服して一息入れられそうだ。楽屋に戻り、みんなにその旨を伝えると、

 

「喜一、スタジオ行く途中の喫煙ルームで吸えよ。もし早く呼ばれても途中で会えるはずだから」

 

 マコトの指示に従ってそうすることにした。キセルなのでほんの1分あれば済む。吸い終わって一息入れられたところで楽屋に戻る途中、向こうからADに先導されたメンバーが楽器持って101スタジオに行くところに出くわした。

 

「喜一、云った通りだろ」

 

 オレは小走りで楽屋に戻り、ムスタングを手にして後を追いかける。しかし、急ぎ過ぎて息が上がってしまったら歌に差し仕えると思い、途中からゆっくり歩いて息を整えながら向かった。

 メンバーはスタジオ脇の控室にいた。マコトの娘さんの隣の席が空いていたので座る。目の前の廊下を鈴木トオルさんが通りかかり、オレたちに気づいた。挨拶を交わし終え、また着席したそのとき、マコトが、

 

「あれ?喜一、シールド(ギターケーブル)とエフェクター(Phase 90)は?」

 

「あ!」

 

「やっぱりな。やるんじゃないかと思った」

 

 洋介がニヤリとしながら云う。

 

「楽屋に忘れたか…。あ、待てよ。1本は局のシールド借りたんだ。自分のもう1本はスタッフに預けたんだ」

 

 オレはケーブルを2本使っていて、間にエフェクターをかませていた。思い出そうとしたが、本番が迫っていることもあって混乱して来た。とにかくケーブルさえあればなんとかなる。

 

「エフェクターは?」

 

「楽屋に置いて来たか。テーブルの上だったっけ…。んーと、ま、いっか。なくても。ケーブルをアンプに直に差せば。ん?でも5mのケーブルでアンプまで長さ大丈夫かな」

 

「俺がギリ5m

 

 マコトが云った。自分のアンプの位置からマイク前までの距離を思い出そうとしたが、思い出せない。

 

 洋介が、

 

「大丈夫じゃない?なんとかごまかせるよ」

 

 それでオレもこの件は落着したつもりだった。しかし、リハと違うことになると本番でのテンションに影響してしまうかもしれない。たとえ使わないとはいえ、エフェクターがあるなしで、ケーブルの長さが変わるため、歌や動きや支障が出たらと不安になって来た。

 

「あのさ。悪いんだけどさあ、楽屋行って、オレンジの四角い箱みたいのがエフェクターだから持って来てもらえる?」

 

 と、隣にいるマコトの娘さんに頼んだ。

 

「マジか!」

 

 尚が驚き、苦笑している。SALLYのスタンバイはもうすぐだが、走れば往復2分で取って来れるだろう。娘さんが了解し、控室を飛び出して行った。その後、程なくなしてADから声がかかった。

 

SALLYさんスタンバイお願いします」

 

 フロア脇にいた長尾Pにまた挨拶し、ADに促されてステージに上がると客席が一瞬どよめいた。その時だった。オレの立ち位置には、ちゃんとエフェクターもケーブルもセットされているではないか。もしかしてスタッフが取りに行き、早くもセットまでしてくれたのか。いや、こんなに早いわけがない。思い出した。

 

「あ、そうか。リハ終わりで、機材スタッフにギター以外、ケーブルもエフェクターも全部預けたんだ」

 

 ホッとすると同時に、メンバーもそのことに気づき大笑いとなった。が…、ってことは今頃娘さんは血眼になって探しているに違いない。ヤバイ…。あきらめてすぐに戻って来てくれれば良いんだけど。

 ステージ上は、それぞれのセッティングが終わり、あとはキューを待つだけとなった。スタジオの入口に目をやったが、娘さんの姿はなかった。ディレクターのキューが出た。「バージンブルー」のイントロが始まった。そのとたん、それら一切のことはオレの脳裏からスーッとかき消された。

 以降、本番の様子は3/16OAでご視聴いただきたい。

 

 SALLYの出番が終わり、スタジオを出る。長尾Pが、

 

「おー!お疲れさん」

 

 少し柔和な表情に見えた。ホッとした。ハコと尚には、リハよりも本番の方が歌良かったと云われた。メンバーにそう云われたのならさらに安心だ。メイクさんが「すぐにメイク落としますか」と訊ねて来たので、何度も楽屋を往復するのも大変なので、すぐに落としてもらうことにした。ほかのメンバーは楽器を置きに一旦楽屋へ戻ったようだ。

 メイクを落としてもらっている間、楽屋に戻ってもないはずのエフェクターを取りに行かせたことをようやく思い出す。ああ、悪い事したな。スタジオに戻って来れたのかな。

 メイク落としが終わり、ムスタングを肩にかけて楽屋へ戻る。その途中でマコトとハコに出くわした。

 

「喜一、娘、怒ってるよー」

 

「喜一、娘さん泣いてるよ。これcolumnに書かなきゃな」

 

 あちゃ〜。歌う前の緊張感とは別の緊張感が込み上げて来た。楽屋に戻るなり、娘さんにひたすら謝る。

 

「やっぱりな。喜一、なんかやるんじゃないかと思ってたよ」

 

 洋介が昔の口調に戻って、責め立てるように云った。

 

「喜一に打ち上げでおごってもらいな。好きなものなんでも頼んで」

 

 当然そのつもりだった。しかし、彼女は怒っても泣いてもいず、終始笑顔だった。無理していたのかもしれないが、それでもその笑顔にオレは救われた思いになったのは確かである。あとから聞いたが、結局戻って来たものの本番中はスタジオには入れず、スタジオ脇のモニターでオレたちの演奏を観ていたとのこと。悪いことをしてしまった。

 

 打ち上げはいくつかの店を物色したが、どこも満席で、道玄坂まで歩き、ようやくミライザカ道玄坂店に入ることができた。尚はこのまま車で大阪に帰ると云い残し、NHKを出たところでオレたちと別れた。本番では尚らしいパフォーマンスをしていたはずだ。その画がカメラに抜かれていれば良いのだが。

 

「喜一のおごりだからなんでも頼みなよ」

 

 洋介がマコトの娘さんにくどいくらいそう云う。

 

「昔っから、大事なところで何かやるんだよ。コイツは。忘れ物もそうだけど。このボケ老人って呼んでたからな」

 

 酒が入って、洋介の口調は完全に昔の、SALLY時代のオレに対するそれになっていた。ほかのメンバーもまたオレが過去にやらかした話は知っている。しかし、それはそれとして、弁解がましいのは承知の上で云わせてもらえば、今回のことで本番直前の緊張が和らぎ、ステージはリラックスした良いムードになったのではないかと、そんな風にも思えないこともなかった。また、洋介とオレの心理的距離がおかげで少し縮まり、昔のような口調に戻れたことはむしろ僥倖だったとすら思うのだが、これは勝手な言い分であり見解であるかもしれない。

 

 今回オレのやらかした事でのハナシも一段落し、昔話に花が咲いたところで、またしてもオレはやらかしてしまった。マコトの隣でおとなしくコーラを飲んでいた彼女を、

 

「ところで、あれだよね。マコトの姪だよね。マコトの兄貴の娘さん?」

 

 座が一瞬、シンとした。

 

「おまえ、マジで何云ってんだよ!一日中、娘って云ってただろうが」

 

 洋介が吼えるように云った。オレは何を聞き間違えたのか、今の今までマコトの姪だとばかり思っていたのだ。マコトに紹介されたときに、娘の‘め’という音だけが聞こえていたのかもしれない。もはや弁解の余地はない。

 

「まったくこのボケ老人が!ホント、何にも変わってねえよな」

 

 この後に及んで2度までも失礼ぶっこいてしまった。またしても平謝り。それでも彼女は笑ってくれていたのだが、果たして本当に許してもらえたのだろうか。

 38年ぶりのSALLYのテレビ出演。やはり、ただでは終わらなかった。このことは、いつまでもメンバーには云われ続けることになるだろう。ようやく長い一日がようやく終わろうとしていた。

 

 

 

 BGM fav147 途中

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